女性の睡眠時無呼吸症候群について
女性の睡眠時無呼吸症候群は診断されにくい
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠中に気道が閉塞することで起こる睡眠関連呼吸障害です。多くの場合、喉の筋肉が弛緩する、もしくは舌が気道に向かって落ち込むことにより空気の流れを妨げることが原因です。
このような現象が起こると、呼吸を再開するために脳は無意識のうちに覚醒します。朝、夜中に目覚めたことは覚えていませんが、このサイクルは一晩中繰り返されています。そのため、心身の機能を回復するために必要な休息が取れなくなります。成人の約5人に1人には睡眠時無呼吸症候群のリスクがあります1。
多くの人は、OSASと言うと、中年男性、肥満、いびきがうるさいなどを想像するのではないでしょうか。年齢、性別、体重、首の周囲など、全てがOSASの因子となりえますが、しかしこれらのパラメータが全ての患者層を語れるわけではありません。
以前の研究では、OSASと診断される男女比が偏っていることが示されていました(男女比は8もしくは9:1)。しかし、一般人口を対象とした研究によると、実際の男女比率は2もしくは3:1ほどと言われています。2
なぜ女性は男性に比べて診断されにくいのか?
女性のOSASの罹患率は、男性の半分であるにもかかわらず、その診断と治療は女性の8分の1程度しか受けられていません。つまり、女性の診断は大幅に下回っていることになります。なぜでしょうか?
うつ病、不眠症、不安症など、あまり「典型的」ではない症状は、誤診する原因になっている可能性があります。
軽度のOSAS女性の場合、いびき、無呼吸の指摘、体重、日中の過度な眠気などといった特徴的な症状は、同程度のOSAS男性と比べてあまり多くありません。このことからも病気の発見に繋がりにくくなっている可能性があります。女性は日中の眠気を経験するものの、眠気を感じる閾値が異なるか、眠気の訴え方が男性とは異なる可能性があります3。
女性は、睡眠時無呼吸症候群以外の病気と間違えられる場合があります:
- 貧血
- 心疾患または肺疾患
- うつ病
- 糖尿病
- 過労による疲労
- 線維筋痛症
- 高血圧症
- 心気症
- 甲状腺機能低下症
- 不眠症
- 更年期障害
- 肥満症
睡眠時無呼吸の危険性は?
男性と同様に、未治療のOSASの女性は、高血圧、脳卒中、Ⅱ型糖尿病、メタボリックシンドローム、うつ病などの慢性疾患を発症するリスクが高くなります。
日中の機能障害、集中力の低下、作業遂行能力の低下、精神運動能力の低下、全体的な生活の質の低下と関連しているため、軽度の睡眠時無呼吸症候群であっても、治療が必要です。
女性によく見られる症状:
- 十分な睡眠時間(通常7~8時間)をとっているにもかかわらず、日中の疲労感やエネルギー不足
- すっきりしない睡眠
- 不眠症
- 肥満
- いびき
- うつ病
- 不安や不機嫌
- 起床時の口の渇き
- 朝の頭痛
- 睡眠中の無呼吸
- 尿意や喘鳴による頻繁な覚醒
- 閉経
- 薬を服用してもコントロールが難しい高血圧
Reference
Young, Terry, et al. “Epidemiology of Obstructive Sleep Apnea A Population Health Perspective.” American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 1 May 2002, www.atsjournals.org/doi/full/10.1164/rccm.2109080.
“Women & Sleep Apnea.” National Sleep Foundation, www.sleepfoundation.org/articles/women-and-sleep-apnea.
Alison Wimms, Holger Woehrle, Sahisha Ketheeswaran, Dinesh Ramanan, and Jeffery Armitstead, “Obstructive Sleep Apnea in Women: Specific Issues and Interventions,” BioMed Research International, vol. 2016, Article ID 1764837, 9 pages, 2016. https://doi.org/10.1155/2016/1764837.